譲渡税
個人が不動産の売却をしたことによる譲渡益は譲渡所得として、他の所得(給与所得や事業所得など)と分離し所得税と住民税が課税されます。また、一定の売却損は他の所得と相殺することによって所得税と住民税の減額をすることができます。不動産の売却による利益とは、原則として取得時から売却時までの資産の値上益であり、具体的には次の算式により計算されます。
譲渡所得の税額=[総収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除]×税率
総収入金額
収入金額は、資産を譲渡したことによるその年において「収入すべき金額」のことをいいます。たとえ、譲渡をした年に売却代金の一部しか受け取っていない場合においても、未収入金部分である残金を含めた全額がその資産を譲渡した年の収入金額となります。また、固定資産税等の精算金も収入金額となります。
総収入金額=売買代金+固定資産税等の精算金
取得費
次に掲げる実額取得費と概算取得費とのいずれか大きい方(納税者有利)を選択します。
1.実額取得費
実額取得費とは、実際に支出した金額に基づく取得費で、契約書・領収書・請求書などの第三者発行の資料を根拠に計算するものです。したがって、取得時の契約書等の資料がない場合には原則として実額取得費を計算することはできません。 実額取得費は、不動産の購入代金等に仲介手数料などの購入諸経費と造成費用やリフォームなどの改良費用を加えて計算します。建物の取得費は、これらの合計額から減価償却費を控除します。
土地の実額取得費=取得に要した金額+設備費及び改良費
家屋の実額取得費=取得に要した金額+設備費及び改良費-減価償却費
具体的に実額取得費としては次のようなものが該当します。
(業務用資産の場合4、5、6、8は取得費に算入されません。また、消費税は含めて計算を行います。)
- 1. 購入代金
- 2. 建物請負代金
- 3. 購入時の仲介手数料
- 4. 購入時の契約書の印紙代
- 5. 取得時の登記費用(登録免許税、司法書士等の報酬)
- 6. 不動産取得税
- 7. 購入時に支払った立退料、移転料
- 8. 特別土地保有税
- 9. 土地造成費用
- 10. 購入後概ね1年以内に取り壊した建物の購入代金
及び取壊費用 - 11. 使用開始前の借入金の支払利息
- 12. 契約解除に伴い支出する解約違約金
- 13. 借地の更新料
- 14. 建物の増改築代金
- 15. その他取得関連費用
【減価償却費の計算】
建物の取得費は上記購入代金等から減価償却費を控除した金額となります。
住宅用建物の減価償却費の計算方法は定額法と定率法がありますが、マイホームなどの非業務用資産と平成10年4月1日以降取得の業務用資産は定額法によって減価償却費の計算を行います。
(イ)非業務用期間(定額法のみ)
減価償却費=購入代金等×0.9×償却率×経過年数
経過年数は端数が6ヶ月以上のときは1年とし、6ヶ月未満のときは切り捨てます。
(ロ)業務用期間
選択した償却方法に基づき過去に必要経費に計上した金額
- 定額法の場合
-
H19.3.31以前取得分の1年当たり償却費=購入代金等×0.9×償却率
-
H19.4.1以後取得分の1年当たり償却費=購入代金等×償却率
- 定率法の場合
-
H19.3.31以前取得分の1年当たり償却費=未償却残高×償却率
-
H19.4.1以後取得分は計算が複雑ですので税理士にご相談ください。
(ハ)住宅用建物の定額法償却率表
構 造 | 非業務用 | 業務用 | |||
---|---|---|---|---|---|
~H9.12.31建築 | H10.1.1~建築 | H19.4.1~建築 | |||
木 造 | 0.031 | 0.042 | 0.046 | ||
軽量鉄骨 | 3mm超 4mm以下 | 0.025 | 0.034 | 0.037 | 0.038 |
3mm以下 | 0.036 | 0.05 | 0.052 | 0.053 | |
鉄筋コンクリート | 0.015 | 0.017 | 0.022 |
構 造 | 非業務用 | 業務用 | |||
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~H9.12.31建築 | H10.1.1~建築 | H19.4.1~建築 | |||
木 造 | 0.031 | 0.042 | 0.046 | ||
軽量鉄骨 | 3mm超 4mm以下 | 0.025 | 0.034 | 0.037 | 0.038 |
3mm以下 | 0.036 | 0.05 | 0.052 | 0.053 | |
鉄筋コンクリート | 0.015 | 0.017 | 0.022 |
2.概算取得費
実際の購入代金などを使って計算した取得費を「実額取得費」、収入金額の5%で計算した取得費を「概算取得費」といいます。実額取得費が不明の場合または実額取得費よりも概算取得費の方が大きい場合には概算取得費を選択します。
概算取得費=総収入金額×5%
譲渡費用
譲渡費用とは、譲渡するために直接支出した費用のことです。
不動産を譲渡する場合には様々な費用がかかりますが、このように譲渡のために支払った費用についても、取得費と共に収入金額から差し引いて譲渡所得を計算します。
- 1. 売却時の仲介手数料
- 2. 売却時の契約書の印紙代
- 3. 売却時の登記費用(登録免許税、司法書士等の報酬)
- 4. 売却のための広告料
- 5. 売却のために行った測量費、不動産鑑定料
- 6. 譲渡のために支払った立退料
- 7. 土地等を売却するために取り壊した建物の取り壊し費用、
及び取り壊した建物の取得費相当額 - 8. 売買契約後に更に有利な条件で他に売却するために
支出する解約違約金 - 9. その他譲渡関連費用
※引越し費用、固定資産税、譲渡代金の取り立て費用などは譲渡費用には含まれません。
特別控除
特別控除は政策的配慮から一定の要件に該当する譲渡益について課税しないためのもので、代表的な特別控除に次のものがあります。
種類 | 概要 | 控除限度額 |
---|---|---|
平成21年及び22年に取得した土地等に係る長期譲渡所得の特別控除 | 平成21年、22年中に取得した土地を譲渡年の1月1日における所有期間が5年を超えて譲渡した場合 | 1,000万円 |
居住用財産の特別控除 | 自己の居住の用に供されている家屋及びその敷地の用に供されている土地等を譲渡した場合 | 3,000万円 |
土地収用法等の特別控除 | 都市計画法等により資産が収用された場合 | 5,000万円 |
税率
不動産の譲渡所得は、その不動産の所有期間に応じて「長期譲渡所得」と「短期譲渡所得」に区分されます。短期譲渡所得に比べ長期譲渡所得の方が税金の計算上優遇されていますので、所有期間の判定は重要です。
不動産の譲渡所得の所有期間の判定は、単純に「取得の日」から「譲渡の日」までの期間で判定するのではなく、「取得の日」から「譲渡の日」の属する年の1月1日現在の所有期間で判定しますので注意が必要です。また、「取得の日」と「譲渡の日」は、新築家屋を除いて選択することができますので、所有期間が長くなるように選択することがポイントになります。
譲渡年の1月1日現在における所有期間 | 所得の区分 | 税率 |
---|---|---|
5年超 | 長期譲渡所得 | 20.315%(国税15.315%、地方税5%) |
5年以内 | 短期譲渡所得 | 39.63%(国税30.63%、地方税9%) |